2022 年 27 巻 1 号 p. 1_50-1_55
本稿では、琉球弧の島々を事例に、水と人間との循環的なかかわりと、その関係性の回復からコミュニティ・ケイパビリティの向上を試みる協働研究の一端を紹介した。
琉球弧の島々は高島と低島に分類され、それぞれの自然特性に応じた固有の言語や文化、在来的な知識や技術を発達させてきた。特に琉球石灰岩からなる低島では、雨水の多くが地下に浸透するため、湧水を利用するなど、水資源の確保に苦労をしてきた。1972年の本土復帰後、ダム建設などによって水源が確保されると、沖縄の水―社会システムは急激に変化した。このように貴重な資源であった水は、琉球弧の島々において、1)実利的な在来的知識や技術の対象、2)聖なる水として文化的価値を見出されてきた。しかしながら、現在は赤土流出や水質悪化など様々な問題に直面している。そこで本稿では筆者が関わっている二つの協働プロジェクトを提示し、協働研究によって醸成されるコミュニティ・ケイパビリティの可能性について論じた。