気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会の第6次評価報告書では、8年前の前回報告書と比較して、過去と将来の気候変動に関する知見が精緻になった。産業化以前から直近10年までの世界平均気温上昇量は1.09℃と評価され、それが人間活動の影響であることは「疑う余地がない」と結論された。将来シナリオには社会経済の見通しが付与され、パリ協定の「1.5℃」目標に対応して排出量が非常に低いシナリオが追加された。将来の気温上昇見通しは最良推定値が若干高くなり、不確実性が大幅に減少した。今後20年の平均気温が産業化以前から1.5℃上昇に達する可能性はいずれのシナリオでも50%以上と評価された。これらの結論は、産業化以前から1.5℃上昇で温暖化を止める可能性は残されているものの、現在の世界各国の対策目標では不十分であることを明瞭に示している。