2022 年 27 巻 10 号 p. 10_19-10_22
難聴・難病と共に生きる研究者の実態の一例として、筆者の普段の業務実態、抱えている問題を紹介し、有り得る解決策について私見を述べたい。まず、筆者は補聴器をつけて何とか会話ができる程度の難聴がある。研究者の業務は一人でできることが多いが、当然ながらコミュニケーションは重要で、難聴は少なくない困難を生じる。コミュニケーションが困難だという問題は、コロナ禍でリモートワークが一般的になった状況と共通する面があり、同様の対応策が難聴者にも有効となることを述べる。また、筆者は難病を抱えている。定期的な通院等が必要で、決まった時間に働けないこともあるが、研究職でよく採用されている裁量労働制など、柔軟な働き方を可能にする制度が役に立っている。しかし、現在の研究者の職制は自由に時間を使えて体力のある人を前提とした制度設計であり、そのことが多様性を産みにくくしている可能性について述べる。