2022 年 27 巻 10 号 p. 10_23-10_27
私は看護学部在学中に歩行障害などの障害をもち、大学の配慮を受けながら看護師の資格を得て、現在は医科大学で教育と研究を行っている。日本は2014年の国連の障害者権利条約への批准を受けて、障害をもちながら高等教育機関で学ぶ「障害学生」の数が増加してきた。また近年欧米では、障害のある医療者/医療系学生のインクルージョン推進の動きが活発で、医学や看護の大学向けのガイド等が発行されている。障害のある医療者/医療系学生が増えることは、本人が障害特性を活かした活躍をすることと、周囲への影響という二つの側面から、障害による医療アクセスの差を解消し、医療の質向上に貢献する。研究と教育が行われる場は、社会における新たな知や価値を見いだすことを目指しながら、かつ、学生が学ぶ場である。障害のある人が医療に関する教育や研究の場にいることは、多数派仕様の医療に、新たな価値を追加できるのではないかと考えている。