学術の動向
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いま「戦争」を考える ─社会学・社会福祉学の視座から─
戦争とメディア・文化
──「継承」の欲望への問い
福間 良明
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2022 年 27 巻 12 号 p. 12_10-12_15

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抄録

 毎年8月になると、新聞・テレビをはじめとするマス・メディアでは、「記憶の継承」が多く語られる。こうした言説に共通するのは、存命の体験者が少なくなっていることへの焦燥感である。「いまのうちに体験者に聞き取っておかなければならない」という認識は、広く見られるものである。だが、そこで何が継承されようとしているのだろうか。今日語られているものが、さまざまな忘却を経た「上澄み」のようなものであるとするなら、「継承」こそが「忘却」を再生産させてはいないだろうか。さらに言えば、体験や記憶は、そうやすやすと非体験者が受け入れ、共感できるものだったのか。1960年代には、戦中派世代と下の世代の間の深刻な対立が社会問題になっていた。だとすれば、昨今の調和的な「継承」は、かつての「断絶」の存在を後景化しているのではないか。本稿では、こうした「継承」と「忘却」の力学を考えたい。

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