戦争はジェンダーと深いかかわりをもっている。男性が女子供を「保護する」という家父長制的なジェンダー秩序は、暴力の導火線のように機能することで、戦争に適した状態をつくりあげてきた。この意味で、ジェンダーは、戦争を引き起こす原因としてある。
一方で、戦争はジェンダー化された暴力を引き起こす。戦時性暴力は長いこと、戦争の副産物とされ不可視化されてきたが、近年では「戦争兵器」と捉える見方が登場するようになった。だが、性暴力は安全保障化され、「保護する責任」の名の下で軍事化されたジェンダー秩序を再編しつつある。この意味で、ジェンダーは戦争の結果でもある。
戦争とジェンダーの間にこのような循環的な関係があることを思えば、戦争と暴力を考えるためには、そして、戦争と暴力に抗うためには、日常から戦場までのつながりのなかで、ジェンダーの視角から考えることが不可欠なのである。