2022 年 27 巻 12 号 p. 12_42-12_45
戦後社会は、いわゆる「アジア・太平洋戦争」の経験を平和主義の基盤とするため、「戦争体験」や「戦争の記憶」、「戦争観」の研究を進めてきた。ただ敗戦後も人類は、「冷戦」から「新しい戦争」まで、様々な戦争を経験してきた。そしてさらに2022年2月からはウクライナ侵攻が始まり、平和や戦争をめぐる議論の前提が変わったようにみえる。こうしたとき、戦争研究にはどのような役割が期待されているだろうか。ひとつには、アジア・太平洋戦争に関する研究の蓄積を現代にアップデートさせるため、比較と歴史においてそれらを相対化することが求められている。もうひとつには、戦争の記憶や戦争観の研究を、量的・質的な社会意識の研究として継承して行くことが求められている。その際には、これまでの調査とその国際比較において際だった特徴になっている「わからない(DK)」回答の多さについて、繊細かつ慎重な分析が重要となるだろう。