河川が海に流入して河口部に形成されるデルタ(三角州)は、完新世の海水準変動に支配されて8〜6千年前以降に形成されてきた。デルタは、河川流域の人間活動の影響を受け、アジアのデルタでは1〜2千年前から森林伐採などによる土壌流出によって運搬土砂量が増加し大きく成長してきた。しかし、1950年代以降のダム建設に伴って運搬土砂量は激減し、デルタにおいては沿岸侵食などの問題が生じてきている。急速な経済成長を続けるアジアの国々では水資源や骨材資源を必要としており、地下水の汲み上げ過多による地盤沈下や、河川からの砂利採取による問題も顕在化してきている。地球規模で各地域において同様な問題が起こっており、特に気候変動などの地球規模の変動と比べて変化速度が大きいことから、早急な対応が必要である。5億人以上の人が居住し、高い生産性や豊かな生物多様性を持つデルタの持続的な保全や利活用は、人類にとって重要な課題である。