2022 年 27 巻 3 号 p. 3_34-3_39
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策による市民生活への影響は多方面に及ぶ。国や地方公共団体による各種対策の法的根拠として「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」や「新型インフルエンザ等対策特別措置法」などがあるが、この間の法の運用をめぐっては、法治主義の軽視という観点から様々な問題点が指摘されている。ワクチン接種の推進方法など種々の対策の内容や決定プロセスが専門的知見も踏まえた合理的で実効的なものとなっているか、政府の諸施策に対する国民の信頼を得るためにどのようなリスクコミュニケーションが必要か、感染症の患者やその家族等が不当な偏見・差別等に遭うことがないよう過去の感染症対策の歴史を踏まえた適切な配慮がなされているかなど、法学の分野が取り組むべき課題は山積している。