2022 年 27 巻 3 号 p. 3_68-3_70
日本の病院船の歴史を振り返ると共に、最近の阪神・淡路大震災、東日本大震災、新型コロナウイルス禍という三つの大災害に見舞われたことから、日本政府の行った病院船建造の検討について述べる。この検討の結果、多額の建造費と維持費がかかること、医療スタッフの確保が難しいこと、平時利用の目途が付かないことが理由となって病院船の建造は断念され、海上自衛隊や海上保安庁等の既存船の病院機能を活用することが現実的という結論となった。ただし、国土交通省の検討会では、パンデミック対応もできる病院船の具体的な試設計および船価の試算等も行っており、今後再び建造が計画された時の有益な資料となっている。
一方、日本の新型コロナウイルス禍は大型クルーズ客船の船内集団感染から始まった感が強いが、この時の日本政府による迅速な船内隔離は水際対策としての成功事例として、将来的な新型感染症パンデミック時にも有効な貴重な経験であり、全世界と共有すべきである。