戦後日本は、奇跡的とまで言わしめた経済成長を達成し、その背景にはジェンダーによって明確に分担される役割配分構造があった。戦後75年を過ぎた今も当時のジェンダー規範を温存し、諸制度の前提と位置づけている状況を根本から見直すには至っていない。それゆえ、女性の高学歴化が進んでも労働者として公平、正当に評価されてきたとは言い難い過去を引きずり、コロナ禍にあって大きなジェンダー格差が露呈した。本論では、家庭内性別役割分担、女性の働き方、女性内格差と、生活保障機能を提供する親密圏としての家族の在り方、について議論する。
男女間に加え、女性内、男性内の年齢、配偶関係、家族関係、さらには人種による格差の存在は、社会の分断をさらに進めることになる。本稿では、ポストコロナに向けた包摂的な社会を考えるためにも、何がいま起こっているのかを改めて確認し、議論することの意味を示す。