2022 年 27 巻 5 号 p. 5_67-5_70
人間の認知情報処理を科学的に理解し、その知見を人間の生存に関わる情報技術にどのようにいかしていくかについて考察する。まず、認知科学の知見を利用し、人間の脳情報処理をハッキングすることで、通常では不可能と思える感覚情報の生成や編集が可能となった例を紹介する。次に、人工神経回路に大量のデータを機械学習させることで人間並みの認知能力を示すようになった人工知能が、人間の脳の情報処理の研究にいかに影響を受け、またいかに影響を与えているかを説明する。そして、人工知能と人間の認知情報処理における差異を縮め、また人間に関する幅広いデータを活用することにより、人間の情報処理過程をコンピュータ内でシミュレーションするヒューマンデジタルツインというアイデアを説明したのちに、このヒューマンデジタルツインを使って生存のための情報学を発展させていく将来構想について述べる。