現在進められている子ども政策の総合化は、福祉的な観点が焦点化されており、教育と学びの観点は後景化している。本稿では、グローバルなECEC(early childhood education and care)政策の動向を参照しつつ、教育と学びの観点の重要性を述べている。その際に、重要なのは、ECECに二つの考え方があるという事実である。一つは、将来の労働者たるべき子どもを就学と学びへと準備するものとしてのECECであり、もう一つは、今既に市民である存在の子どもに大人や仲間との交流の機会と市民であることを学ぶ機会を与えるものとしてのECECである。後者は子どもの権利を基盤としつつ醸成されてきた権利ベースの子どものイメージを基盤としている。総合的な子ども政策を構築するにあたっても、子どもをその未熟さやヴァルネラビリティにおいてのみ定義するのではなく、大人とともに世界の意味と文化を構築する存在、今、ここの市民として位置づける視点が必要である。