2022 年 27 巻 6 号 p. 6_40-6_43
日本の子育て支援のシステムでは戦後長らく、専業主婦を前提にした近代家族モデルが原則で、それに対応する幼児教育の施設が幼稚園であり、それに対する例外として共働き家庭のための保育所があるという構造が続いてきた。そして前者の幼稚園は教育施設であって文部科学省が管轄し、後者の保育所は福祉施設であって厚生労働省が管轄するという、福祉施設としての保育所(厚生労働省)と教育施設としての幼稚園(文部科学省)の分断が差別的に固定化され、保育の社会化を阻む帰結をもたらしてきた。子ども政策の総合化は、こうした分断の解消をめざすものでなければならない。そのうえでポイントとなるのは、子どもを保護の客体としてではなく、権利の主体、市民としてみていくという視点であろう。そして、そうした市民としての子どもたちが集う保育園のような子育て施設は、グローバル・コモンズの発酵の場であるということができる。