2022 年 27 巻 7 号 p. 7_68-7_70
ELSIを踏まえた自動車の自動運転の社会実装を目指して、学術フォーラムで議論が行われた内容を整理し、今後の議論の方向性を述べる。生命科学分野で議論されることが多かったELSIも、社会に大きな変化を与える自動運転の実装が近づき、議論を行う必要が出てきた。法的整備も進められている中ではあるが、倫理的、また法的な検討課題が多く残っている。社会受容性については、過去の技術イノベーションの社会実装例を参考にしながら、境町での実践例を中心に議論された。自動運転を目指したモビリティサービスの定期運行が行われているが、その目的は、自動運転によって移動の過度な乗用車依存を改善し、過疎化、高齢化が進む町の課題解決と活性化を図ることであることが明らかになった。自動運転の社会実装のためには、住民が幸福になる地域社会の未来像を描き、自動運転の社会的便益を認識し、そのリスクとコストを受け入れることが重要である。