学術の動向
Online ISSN : 1884-7080
Print ISSN : 1342-3363
ISSN-L : 1342-3363
第III部 東アジアの地域秩序の変容 ──中国・アメリカ・東南アジアの戦略と域内の論理
東アジアの経済発展と金融協力
三重野 文晴
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 27 巻 8 号 p. 8_39-8_42

詳細
抄録

 アジアの地域秩序のイシューのなかで、金融秩序に関わる域内協力は1990年代後半のアジア金融危機の反省から、日本と中国の協調のもとで取組まれてきた。2000年代には実物経済の発展によるこの地域の主要国の資本輸出国化が実現し、金融秩序は相対的に安定化する。しかし、2010年代になると、巨大な資本輸出国となった中国の打ち出す「一帯一路」戦略が、金融秩序に新しい局面をもたらし、日本、中国、米国間のバランスが変化してきた。今後、コロナ禍のもとで進んだ財政拡大と米国の金融引き締めによる高金利が、アジアの後発国における金融混乱を連鎖的に発生させる可能性があり、またその結果、「一帯一路」による借款に潜む問題が顕在化するかもしれない。このときに、金融秩序に関わる地域協力のあり方が、再び試されることになる。

著者関連情報
© 2022 公益財団法人日本学術協力財団
前の記事 次の記事
feedback
Top