アジアの地域秩序のイシューのなかで、金融秩序に関わる域内協力は1990年代後半のアジア金融危機の反省から、日本と中国の協調のもとで取組まれてきた。2000年代には実物経済の発展によるこの地域の主要国の資本輸出国化が実現し、金融秩序は相対的に安定化する。しかし、2010年代になると、巨大な資本輸出国となった中国の打ち出す「一帯一路」戦略が、金融秩序に新しい局面をもたらし、日本、中国、米国間のバランスが変化してきた。今後、コロナ禍のもとで進んだ財政拡大と米国の金融引き締めによる高金利が、アジアの後発国における金融混乱を連鎖的に発生させる可能性があり、またその結果、「一帯一路」による借款に潜む問題が顕在化するかもしれない。このときに、金融秩序に関わる地域協力のあり方が、再び試されることになる。