学術の動向
Online ISSN : 1884-7080
Print ISSN : 1342-3363
ISSN-L : 1342-3363
第III部 東アジアの地域秩序の変容 ──中国・アメリカ・東南アジアの戦略と域内の論理
アメリカから見た東アジアの視線
──絡み合う外交と内政, そしてメディアの役割
沢村 亙
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 27 巻 8 号 p. 8_57-8_60

詳細
抄録

 米国でいまアジア系市民に対する憎悪犯罪が急増している。トランプ大統領による「中国ウイルス」連呼などの影響もあるが、アジア系の場合はルーツのあるアジアの国々と米国の関係のありようが、そのパーセプションを左右する傾向が強い。近年、米国の政策決定層は党派を問わず、特に中国への対抗意識を急速に強めてきた。背景には、軍事、経済、科学、価値観などでの米国の「一強」がもはや盤石ではないという自信の揺らぎに加え、台頭する中国が米国内で格差をもたらすグローバル化の負の象徴ととらえられ、不満の矛先が向かいやすい現実がある。米国のメディアも近年、良質な政治・国際報道に力を入れてきた伝統メディアが退潮する一方、感情に訴えやすいSNSやトークラジオが影響を持つようになった。分断のあおりを受けたメディアがさらに偏見をあおる構図だ。その悪循環を絶ち、冷静なアジア観を築く方策を、米国に駐在したジャーナリストの視点から論じる。

著者関連情報
© 2022 公益財団法人日本学術協力財団
前の記事 次の記事
feedback
Top