2023 年 28 巻 3 号 p. 3_36-3_39
東日本大震災はその規模ゆえに、直接の被害だけでなく、復興をめざす政策自体が被災者や被災地に影響を及ぼし問題を深刻化させてきた。政策を検証する手続きは「政策評価」「行政事業レビュー」「白書」などの形で制度化されてきたものの、「復興」政策の政策評価は多様化する被災地・被災者のニーズを十分に反映できていない。従来の政策評価の限界を超え、震災被害者の主体的復興を支える政策を実現するためには、多様化する被災地・被災者の主観的思いや少数者の声へ配慮しながら、住民、行政、学術、市民などを交えた社会的モニタリングの過程を具体化する必要がある。だが、震災被害の資料保存と比べ、復興過程の資料保存はまだ十分ではない。震災・復興政策アーカイブがここで重要となる。長い道のりの復興を将来世代が検証できるようにするためにも、行政資料・統計から各種語り、市民活動資料に至る多様な資料の連携、廃棄される資料の緊急保存などが欠かせない。