2017 年 22 巻 1 号 p. 20-26
ササ群落の放射性物質による汚染の実態を面積単位で推定するため、東京電力福島第一原子力発電所からの距離の異なる二地域において、クマイザサ、ミヤコザサ、スズタケ個体内の放射性セシウム137濃度を調べた。2012年9月にササを採取し、分枝構造から3年前の部位まで齢毎に部位分けし、それぞれの137Cs濃度を測定した。面積あたりの137Cs蓄積量は、原発からの距離または空間線量率とササ種によって概ね予測可能となることが分かった。137Cs濃度は3種共に若い葉ほど低いが、最も低濃度のミヤコザサは、葉寿命が1年と着葉期間が短いため、濃度の高い2010年以前の部位は既に脱落していた。さらに、ミヤコザサが捕捉した137Cs量は着葉量の差によって他種より少なかった可能性が示唆された。ササから林床への移行過程は主に落葉落枝に起因していた。ササの枝葉は137Csを保持したまま脱落すると推察され、ミヤコザサでは調査時点で既に相当量の137Csが葉と共に脱落していたと考えられた。