日本冷凍空調学会論文集
Online ISSN : 2185-789X
Print ISSN : 1344-4905
ISSN-L : 1344-4905
原著論文
筋肉と筋原線維で異なるミオシンとアクチン凍結変性
今野 久仁彦今野 敬子
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 32 巻 1 号 p. 21-27

詳細
抄録

ヒラメ魚肉およびそこから調製した筋原線維(Mf)(0.1 M NaCl, pH 7.5)-20°C で凍結貯蔵した時のミオシン,アクチン変性を比較した.Mf ではCa2+-ATPase の失活とミオシン単量体の減少は8 日程度の期間で同様に進行したが,ミオシン溶解性の低下はほとんど起こらなった.キモトリプシン(Ch)消化で生成するRod 量はほとんど低下せず,尾部の変性は少ないと判断した.凍結Mf Ch 消化でアクチンが消失したので,アクチンの著しい変性が示された.このアクチン変性速度はCa2+-ATPase 失活と同じであった.一方,ヒラメ筋肉を凍結した場合,全ての変性速度は著しく小さくなり,60 日貯蔵でも 75 %のCa2+-ATPase 活性を維持していた.また,Ch 消化パターンの解析からアクチン変性はほとんど認められなかった.以上のことより,Mf 中のアクチンは魚肉中とは異なり,凍結に対して耐性が低く,容易に変性するので,結果としてミオシンを安定化できず早い変性を引きおこすと結論した.以上の結果から,凍結変性研究においてMf は筋肉のモデルとしては不適であることが示された.

著者関連情報
© 2015 公益社団法人 日本冷凍空調学会
前の記事 次の記事
feedback
Top