2025 年 17 巻 1 号 p. 17-24
鉄基構造材料内の空孔の状態が,その磁化過程に与える影響を明らかにすることを目的として,Landau-Lifshitz-Gilbert(LLG)方程式によるマイクロマグネティックシミュレーションを行った.空孔を有する磁性体クラスターに外部磁場を印加し,磁化過程の解析を行った結果,空孔無しの結果と比較して,磁気ヒステリシス曲線,磁壁移動,ならびに交換エネルギーと磁気双極子エネルギーに特徴的な変化が見られた.特に,磁壁が空孔を通過する際にその移動方向に対してわずかに伸びる,いわゆるピニング現象が確認されること,またそれは,磁壁が空孔を通過する際の交換エネルギーの低下に起因すると考えられることなどを明らかにした.さらに,空孔の位置,大きさを変更した結果,エネルギーが変化するタイミングや,変化量に差が生じることなどがわかった.