2021 年 13 巻 p. 89-102
少子高齢化・人口流出等を背景として,過疎地域の持続可能性が問題となっており,地域おこしの必要性が叫ばれている.地域おこしは住民の主体性が重要であると先行研究は指摘している.そのため本稿では住民が居住地域の地域おこしに関心を持つ要因について,先行研究より社会関係資本論の仮説を採用したうえで,2017 年に北海道礼文島で実施した質問紙調査の順序ロジスティック回帰分析を行った.その結果,(1)住民が持つ地域おこしへの関心には,住民の地域への信頼という社会関係資本が正の影響を与えていること,(2)回帰式における島内出身者ダミーと地域への信頼の交互作用項と主効果の分析により,住民が持つ地域への信頼が地域おこしへの関心に影響を与えるのは島内出身者のみであり,島外出身者にはそのような効果は見られないことが明らかになった.以上より,地域おこしのための重要な社会関係資本として従来捉えられてきた地域への信頼が,地元住民か移住者かによって地域おこしへの関心に対して持つ効果が質的に異なる可能性があり,その性質についてさらなる研究が必要であると本稿は結論づけた.