特殊教育学研究
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精神遅滞者の適応行動の構造 : III.技能的側面と行動上の問題との関係
冨安 芳和松田 惺村上 英治江見 佳俊
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1977 年 15 巻 1 号 p. 23-34

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抄録
「ABS適応行動尺度」日本版の標準化に用いたデータ(12才以下児童1971名、13才以上青年・成人4121名)に基づき、尺度第1部、第2部を合わせた場合の適応行動の構造についての分析を試みた。1.尺度第1部の27下位領域、第2部の13領域を合わせ40個の変数に基づく完全セントロイド-バリマックス法による因子分析を行ない、"身辺自立"、"社会適応"、"個人的・社会的責任"、"反社会的・攻撃的行動"、"自己刺激的行動"と名づけられる5因子が抽出された。前3因子は、尺度第1部27下位領域を変数とする分析で明らかにされたものであり、後2因子は、尺度第2部13領域を変数とする分析で現われたものである。因子軸に関して、尺度の第1部と第2部、すなわち、適応行動の技能的側面と行動上の問題の側面とは独立であることがわかった。2.この5因子構造は、主因子-バリマックス法による分析においても再現された。また、年齢、MILによって分析対象を細分した場合にも、一貫して現われることが付言された。3.40変数についての分析においても、"身辺自立の因子"と"社会適応の因子"の寄与率(Vp%)における発達的変化が再確認された。以上3報にわたり報告されてきた直交解による因子分析では、かならずしも単純構造を得ることはできなかったが、これらの分析が、精神遅滞者の適応行動とその測定に関する今後の研究の礎石となることが述べられた。
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© 1977 日本特殊教育学会
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