1992 年 29 巻 4 号 p. 99-104
五十音を表記した文字盤を使い、音声言語を持たない自閉児に対して、文字を音声言語に代わるコミュニケーション手段として獲得させていった養護学校での4年間の実践である。指導は、友達の名前や物の名称を文字盤で差し示すことから始めた。そして、あいさつ、質問、報告、伝達、質問や活動の内容が分からないときに尋ねさせる学習へと広げていった。その結果、文字盤によるコミュニケーションが可能になった。その理由として、次の点があげられる。彼自身に関しては、文字盤での指導以前に文字によるコミュニケーションの体験がわずかながらあった。文字自体に興味を持っていた。指導に関しては、機能面を重視して指導をした。彼の文字盤でのコミュニケーションを維持、強化しようとする周りのスタッフの理解と協力があった。更に1枚のカードで、音声言語に近い情報の伝達が可能であったという文字盤の利点も挙げられる。