特殊教育学研究
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発達障害児の「クレーン行動」に関する一考察 : 文献の展望と行動の観察例から
花熊 曉赤松 真理
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1995 年 33 巻 3 号 p. 53-61

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抄録
大人の手を道具のように用いて欲求を達成しようとする「クレーン行動」は、臨床的によく知られた行動であるにもかかわらず、その定義や行動の詳細、発達的な意味は必ずしも明確ではない。この点を明らかにする目的で、まず、クレーン行動に関する従来の文献を展望し、用語使用の歴史、行動の解釈の変遷、健常児や発達障害児の行動に関する記述について論じた。次に、実際の観察例をあげて、この行動の細部を検討し、(1)クレーン行動の中にも対象の性質や行為の持続性の点で差異が存在すること、(2)その差が行動の背景にある発達レベルの違いを反映する可能性があること、を指摘した。以上の検討をもとに、意図的操作行動(道具使用)の発達と「行為主としての人」の理解の観点から、クレーン行動の特質について述べ、その発達的な意味を論じた。また、その出現から消失までの全過程にわたって、より詳細な研究が必要な点を指摘した。
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© 1995 日本特殊教育学会
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