特殊教育学研究
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戦前の精神病学における「精神薄弱」概念の理論史研究
高橋 智
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1997 年 35 巻 1 号 p. 33-43

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抄録

「精神薄弱」概念の理論史研究の一環として、戦前を代表する呉秀三・三宅鑛一・杉田直樹らの精神病学書を素材に、19世紀末から昭和戦前期までの精神病学における「精神薄弱」概念の形成過程とその特質を検討した。その結果、(1)クレペリン精神病学体系はわが国の「精神薄弱」の成立に影響を与え、「白痴・痴愚・魯鈍」の三分類法の確立や「精神薄弱」の疾病から障害への転換の重要な契機になった。(2)「精神薄弱」の精神病学的診断や定義における知能測定法の適用の問題として、三宅鑛一の提起により、クレペリン精神病学体系による医学的診断を基礎に知能測定法はその補助手段として活用され、1930年代末にはクレペリン精神病学体系と知能測定法の併用方法が採用された。(3)「精神薄弱」児の生活年齢・経験のもつ発達的意味に光を当てた杉田直樹の知能と社会生活適応性の二次元による「精神薄弱」の概念規定は、戦前の到達点であり、戦後の「精神薄弱」概念にも影響を与えた。

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© 1997 日本特殊教育学会
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