1999 年 37 巻 1 号 p. 11-22
本稿は、杉田直樹の治療教育思想研究の一環として、(1)彼の治療教育思想の形成要因と基本的視座、(2)治療教育の理論を実践化した八事少年寮開設の要因、(3)杉田がどのような障害児問題と対峙しその解決を図ったのか、について検討を行った。その結果、(1)杉田の治療教育思想の基本的視座は、呉秀三から踏襲し欧米留学によって体得した社会精神病学であったこと、(2)特殊児童調査によってわが国における障害児の実態を把握し、社会政策的立場から障害児問題をとらえたこと、(3)八事少年寮開設は児童精神病学の確立を意図したものであり、行政の谷間におかれた障害児問題解決への着手であったこと、(4)八事少年寮の開設によって、治療教育実践の実現を支える公的な社会事業の必要性を示したこと、などが明らかとなった。