特殊教育学研究
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福祉施設における儀式的行動を示す自閉症者への支援法に関する研究
小笠原 恵唐岩 正典近藤 伸一郎櫻井 千夏
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2004 年 42 巻 2 号 p. 145-157

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抄録

本研究では、儀式的行動により、福祉施設におけるさまざまな活動への参加が困難となっている自閉症者1名に対して、施設職員が研究者と協力体制を組むなかで、行動のアセスメントおよび支援プログラムの計画・実施を行い、その有効性を、生活スタイルの変化、実際性および適切性、長期的な維持の観点から検討することを目的とした。アセスメントの結果より、対象者の儀式的行動が多く生起し、かつそのことが他の生活に大きな影響を与える場面を、積極的介入場面として特定した。この場面においては、儀式的行動の生起する前後の対応を操作した。積極的介入以外の場面においては、職員との適切なかかわりを増やした。その結果、儀式的行動に要する時間が短縮され、他の活動への参加が増加した。また、対象者についての記録から生活スタイルの質的な変化の分析を行ったところ、対象者の活動への参加、表情、コミュニケーション機会について、ポジティブな変化が示された。この変化は、1年4か月以上維持された。支援を実施した職員全員による支援プログラムの評価でも、100%の効果が認められた。これらのことより、用いたアセスメントおよび支援プログラムの実際性と適切性が示唆された。

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© 2004 日本特殊教育学会
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