本研究は、行動障害を示す人への行動論的アプローチに関する研究を概観し、その理論と技法の発展の過程を明らかにする。さらに、最近の新しい方法論の方向性、および、わが国における今後の課題を検討することを目的とした。1960年代には嫌悪的な技法を中心に適用されたが、その後、より嫌悪性の低い技法の開発がなされた。1980年代には機能的アセスメントの手法が開発され、社会的に適切な行動を形成することで行動障害の軽減が図られるようになった。最近では、積極的行動支援、巨視的アプローチなどにより、行動障害の軽減にとどまらず、対象者の生活全般にアプローチし、生活の質の向上を目指した方法論が展開されるようになった。わが国の今後の課題として、行動論的アプローチの研修やトレーニングの機会を十分に設定すること、地域社会での生活を基盤にしたアプローチの展開、客観的な指標を用いた生活の質の改善についての評価を行うことを指摘した。