特殊教育学研究
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発達性読み書き障害を示した1症例の平仮名読みにおける意味的処理と音韻処理について
松本 敏治
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2006 年 44 巻 2 号 p. 103-113

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抄録

漢字の読み書きに困難を示し意味錯読が顕著にみられる青年の平仮名読みの処理特性を意味的処理・音韻的処理の側面から検討するため、2つの単語リスト読み課題と漢字読み判断実験を行った。本症例では、1)第一の単語リスト読み課題では、平仮名一文字・イラスト・有意味単語の読み速度は健常成人と差がなく、無意味語読みにおいてのみ顕著な遅れがみられた。2)第二の単語リスト読み課題では、意味性の高い単語は繰り返しにより読み速度が顕著に上昇した。3)漢字読み判断課題では、読みが正しくないとの判断の場合、漢字と意味的に関連した場合(町・むら)での反応が意味的に無関係な誤り読み(町・かめ)の場合に比べ反応時間が有意に長かった。また、本症例は本実験実施時、日常生活において漢字の読字書字困難は顕著であったが、平仮名読みの困難は認められなかった。これらの結果に基づいて、本症例の平仮名読み習得と障害機序を考察した。

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© 2006 日本特殊教育学会
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