特殊教育学研究
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聴覚障害者における読み方の違いが文章読解に及ぼす効果の検討 ―日本語対応手話を用いた読み方との比較―
宮谷 祐史井坂 行男
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2019 年 57 巻 3 号 p. 159-166

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抄録

本研究では成人聴覚障害者を対して、音読、黙読および手話併用音読(日本語対応手話を併用した音読)が文章理解に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。予備実験では35名を対象に、日本語対応手話を用いた課題試行時の作動記憶への負担を、リーディングスパンテストを用いて検討した。その結果、日本語対応手話を用いた読み方は、音読と比較して作動記憶の負荷になるとはいえなかった。本実験では40名を対象に、手話併用音読、音読と黙読で文章検証課題成績を分析した。その結果、熟達した読み手であれば、聴覚障害を有していても音読と黙読の理解度の差は少ないことが示唆された。また、手話併用音読を用いることで、テキストレベルだけでなく状況レベルの読解水準においても課題成績の高さが認められた。手話と日本語の両方に熟達した聴覚障害者は手話併用音読を用いることで、単語や文の記銘保持および文章の視覚的イメージの生成が促進される可能性が考察された。

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© 2019 日本特殊教育学会
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