本研究の目的は、ビデオプロンプト(標的行動を促す本人視点で撮影された映像)を用いて、社会的スキル「大丈夫?」の獲得に加え、指導していない場面や日常生活への般化が生じるか否かを明らかにすることであった。他者を気遣う社会的スキル「大丈夫?」の生起がみられなかった2名の中度知的障害を伴う自閉スペクトラム症(ASD)児を対象に、他者が足をぶつけて痛がる場面に対して標的行動を促すビデオプロンプトを実施した。併せて、他者がお腹を痛がる、他者が物を落として驚くなどの計4つの未指導場面および家庭場面への般化を測定した。指導の結果、2名とも標的行動が獲得され、未指導場面および家庭場面における般化が生じた。これらの結果から、ビデオプロンプトを用いた指導を行うことで、社会スキルの獲得や日常生活への般化が促される可能性があることが示された。最後に行動の獲得や般化への効果について考察した。