2021 年 59 巻 3 号 p. 169-178
本研究は、思春期の発達課題に直面した軽度知的障害のある生徒の一状態像を明らかにし、メンタルヘルス上の問題やその支援について検討した。対象は、知的障害特別支援学校に在籍する女子生徒であり、中学部2年時から高等部2年時までのおよそ3年間にわたる支援実践を3期に分けて記述した。当該生徒であるAさんは、支援開始当初は他者への加害不安を主訴としていたが、支援の経過の中で、友人との仲間関係の形成や自己像の再構築といった思春期の発達課題に直面し、葛藤を抱えていることが明らかになり、教員とスクールカウンセラーの連携のもと、相談支援や自己表現の援助、クラスメイトとの関係調整、具体的な気分転換の方法の提案などの包括的な支援が行われた。支援の結果、加害不安が解消されただけでなく、Aさんの率直な自己表現行動の増加、クラスメイトとの関係性の改善などがみられ、多職種連携による包括的な支援の有効性が示唆された。