2022 年 60 巻 1 号 p. 1-11
本研究では、少年院在院者の表情認知特性を検討することを目的とし、先行研究を参考に表情認知課題を作成、実施した。提示された表情の判断について、写真の性別ごとに、非行歴や発達障害などの診断のない大学生群と比較検討を行った。その結果、少年院群では大学生群よりも相対的に正答率が低く、特に悲しみ、恐怖、嫌悪の表情認知に困難があることが示された。加えて誤選択率の分析から、少年院群は悲しみと嫌悪の表情を双方向に誤選択しやすいこと、嫌悪は怒りにも誤選択されやすいこと、恐怖は男性写真において悲しみに誤選択されやすいことが示された。対象者の選定に制約などもあり、得られた結果は限定的であるものの、本研究の結果は、他者の表情をより攻撃的な感情と判断しやすい傾向が少年院在院者の対人関係における問題の一要因となっている可能性を示唆すると考えられた。