2024 年 62 巻 2 号 p. 71-80
本研究では、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある者のきょうだいが同胞の障害を理解するプロセスを明らかにし、プロセスに影響を与えた要因について検討するために、知的障害を伴わないASDのある同胞がいる青年期のきょうだい3名に半構造化面接を実施し、複線経路・等至性モデルを用いて分析を行った。その結果、研究協力者は共通して、同胞の存在を障害の有無にかかわらず受け入れてきていたが、そこに至るプロセスは個々で異なり、さまざまな社会的影響を受けてきたことが明らかになった。また、青年期には自身の経験を統合しながら、同胞の障害や同胞との関係性、自分の将来、家族や社会の障害理解に関する多様な価値観を形成する可能性が示された。きょうだい支援においては、個々の背景を理解した上で、家族全体への包括的な支援を行うことが求められる。今後の課題は、事例研究をさらに蓄積していくことである。