2021 年 102 巻 p. 25-31
本研究の目的は永久歯のカリエスフリーを達成した者のう蝕リスク要因を検討することであった。かかりつけ歯科医院で長期口腔健康管理を受けていた患者6症例を対象に,乳歯列期から永久歯列期までの定期管理の経過を追い,う蝕リスク要因の推移を調査した。その結果,乳歯列期にう蝕リスクが高くても歯科医院と家庭双方で管理をしっかり行うことにより,永久歯列期でのう蝕リスクを低減できることが示唆された。一方,乳歯列期にう蝕リスクが低くても保護者の管理下から離れる年代になると口腔内環境が悪化し,う蝕リスクが高まる可能性が考えられた。以上より,永久歯が萌出する前の幼少期から定期的歯科受診を開始し,フッ化物応用によるう蝕予防を継続しながら歯科衛生士による歯科保健指導を徹底し,本人と保護者の意識を高めることがカリエスフリーを達成する有効な手段であると示唆された。