糖尿病
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症例報告
糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) の治療中に無痛性心筋障害により心筋梗塞様の心電図変化を認めた1型糖尿病の1例
土井 拓哉古田 浩人玉井 昌紀下村 裕子小林 正人若崎 久生西 理宏英 肇中尾 大成友渕 佳昭佐々木 秀行南條 輝志男
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2005 年 48 巻 10 号 p. 739-744

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抄録

症例は40歳男性, 1型糖尿病患者. 糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) 昏睡にて入院. 治療にて意識状態は改善したが, 入院後2日目に無症状ながら心電図上II, III, aVF, V5~V6誘導で心筋梗塞類似のST上昇変化を認めた. 入院時より血中クレアチニンキナーゼ (CK-MB分画) は軽度上昇していたがST上昇後に急上昇, 血中トロポニンT検査も陽性で下壁心筋梗塞が疑われた. しかしながら, 心血管造影検査では心筋梗塞は否定的であった. 心電図変化出現時, 高血糖や高K血症は改善していたが血清Pは低値を示していた. 以上から, 本症例では入院時より高血糖, 代謝性アシドーシス, 電解質異常および完全房室ブロックによる末梢循環不全により心筋障害が存在し, 治療に伴う電解質代謝状態の急激な変化, 特に低P血症に伴い入院後2日目に新たに心筋障害が誘発され心筋梗塞様の心電図変化と心筋逸脱酵素の上昇が認められたものと考えられた.

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© 2005 一般社団法人 日本糖尿病学会
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