糖尿病
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原著
境界型からの2型糖尿病発症におけるインスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームの寄与
松本 一成尾崎 方子藤田 成裕三宅 清兵衛
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2005 年 48 巻 12 号 p. 849-854

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抄録

境界型47例を3年間前向きに経過観察し, 2型糖尿病を発症しやすい患者の臨床的特徴を, インスリン抵抗性やメタボリックシンドロームとの関係に焦点をあてて調査した. インスリン抵抗性はインスリン負荷試験のK値 (Kitt) にて測定した. 糖尿病を発症した境界型患者 (16例) は, 腹囲が有意に大きく (89±14 vs. 82±9cm, p<0.05), 空腹時血糖値が有意に高く (111±17 vs. 101±10mg/dl, p<0.05), インスリン抵抗性が有意に高度 (3.31±1.11 vs. 4.23±1.13%/min, p<0.05) で, メタボリックシンドロームの比率が有意に高かった (68.8% vs. 32.3%, p<0.05). また, メタボリックシンドロームを呈する境界型からは, メタボリックシンドロームを伴わない境界型と比較して有意に多くの糖尿病が発症した (52.4% vs. 19.2%, p<0.05). 多重ロジスティック回帰分析においては, 種々のモデルにてインスリン抵抗性とメタボリックシンドロームは独立した危険因子であったが, インスリン分泌は糖尿病発症の独立した危険因子ではなかった. 以上のことより, 境界型のなかでインスリン抵抗性が高度な患者やメタボリックシンドロームを呈する患者は2型糖尿病に移行しやすいと思われた. 糖尿病の発症を効率よく予知するためには, 糖負荷試験のみでなく, 腹囲, 血圧, 脂質なども測定し, メタボリックシンドロームの有無を診断することが有用であると思われた. 今後, 多数例での検証が必要であろう.

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© 2005 一般社団法人 日本糖尿病学会
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