2005 年 48 巻 Supplement1 号 p. A41-A44
我々は, 診断時に一過性に膵頭部腫大を示した1例を経験した. 劇症1型糖尿病の成因や病態を考える上で貴重な症例と考え, 報告する. 症例は57歳, 男性. 2002年2月初旬より感冒様症状があり, 2月10日午後, 突然, 口渇, 多尿が生じた. 12日朝までに3kgの体重減少も認め, 同日慶應義塾大学病院を受診. 血糖758mg/dl, pH7.194, 尿ケトン体3+より糖尿病性ケトアシドーシスと診断され, 北里研究所病院に搬送された. HbA1c5.7%, インスリン分泌の枯渇, 膵酵素の一過性上昇より劇症1型糖尿病と診断した. 第4病日の腹部CT所見で膵頭部の腫大を認めたが, 第10病日には正常化していた. 本症例は劇症1型糖尿病の膵臓が発症から10日以内に大きな変化を生じていることを示唆し, 劇症1型糖尿病の病理所見が時間経過によって変化する可能性を示唆するものと考えられた.