2006 年 49 巻 12 号 p. 947-951
家族性リポ蛋白リパーゼ(LPL)ホモ欠損症に合併した糖尿病の1例を報告した.患者は49歳男性.30歳以前に急性膵炎を反復,2年前に糖尿病を発症,今回,血糖コントロール悪化のため入院した.インスリン4回法にて血糖改善したが,カイロミクロン(CM)血症を伴うトリグリセリド(TG)の著増(3,750 mg/dl)を認め,ヘパリン静注後の血漿LPL濃度の著減(<9 ng/ml)およびDNA解析によりLPLのAsp 204 Gluホモ変異が証明された.妹にも膵炎の既往と高TG血症があり,家族性と考えられた.食事前および後のTGはCM分画よりVLDL,特にその大分子中に最も多く存在し,V型を呈した.LDL, HDL濃度の著減,血中FFA濃度の一貫した低値は,これらの代謝の中心にLPLがあることを示している.本例の糖尿病は痩せ型であり,CPRの著減,インスリン需要量およびアディポネクチン濃度から推察してインスリン高感受性の膵性糖尿病と考えた.また,本例には腎機能低下を伴う多発性の腎嚢胞があるが,病態の詳細は不明である.