2006 年 49 巻 3 号 p. 221-226
症例は62歳,女性.59歳時に2型糖尿病の診断を受け,経口血糖降下薬,その後インスリン治療が行われたが,HbA1cは10%程度を推移していた.今回当院にて胸腺腫を指摘され,血中CPRは0.76 ng/mlと低値,抗GAD抗体陽性より,胸腺腫合併緩徐進行1型糖尿病と診断した.抗GAD抗体は32,300 U/mlと強陽性であった.重症筋無力症の所見はみられなかった.胸腺腫摘出後も1型糖尿病の明らかな病態変化を捉えられなかった.また,本邦の1型糖尿病と胸腺腫(重症筋無力症)合併例の臨床的特徴を検討した.合併例では,本例のように抗GAD抗体が強陽性で,1型糖尿病は緩徐発症型が多い傾向がみられた.合併例のHLAでは,本例でみられたDR 4の他に,DR 9とA 24が多く認められた.本例では胸腺腫の発症時期は不明だが,合併例の検討では胸腺腫(重症筋無力症)が1型糖尿病より先に発症する傾向を認めた.