糖尿病
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原著
1型糖尿病透析患者における血糖変動
—腎の血糖調節にはたす役割—
島 健二川原 和彦小松 まち子川島 周
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2006 年 49 巻 9 号 p. 709-715

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抄録

腎の血糖調節にはたす役割を解明すべく,1型糖尿病透析患者(HD)の血糖変動を腎機能正常1型糖尿病患者(non-HD)のそれと比較した.
HD 4例とnon-HD 13例を対象に1カ月間の早朝空腹時最低血糖値,血糖不安定性,腎実質容量などについて両群間で比較した.また,HD 1例について,透析導入前26カ月間,導入直後12カ月間およびその後26カ月間にわたり,上記項目および“重症”低血糖症(BS≤20 mg/dl)の発症頻度を各期間で比較した.HD, non-HD群間の比較において,平均最低血糖値,インスリン投与量は前者で有意に低値であった.血糖不安定性はHD群で大である傾向を示した.HD群の腎実質容量は正常者の28.5%と著しく縮小していた.透析導入前・後の比較で,導入12カ月間を経た後の期間において,平均最低血糖値,インスリン投与量は有意に低く,“重症”低血糖症の発症頻度は有意に大であった.また,血糖不安定性は大である傾向を示した.
1型糖尿病透析患者における低血糖,血糖不安定性に一部腎の糖代謝機能障害の関与の可能性が推定された.

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© 2006 一般社団法人 日本糖尿病学会
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