症例は65歳の男性.21年来の糖尿病.内服治療中の2003年5月,腹部超音波検査で肝腫瘍が発見され,B型慢性肝炎,肝細胞癌と診断された.6月外科に入院,肝切除術が施行された.8月遺残膿瘍で発熱が続き3回目の入院加療.11月再度発熱,胸水貯留しており,入院の上抗菌薬投与,トロッカー挿入.退院後の2004年1月再度発熱して入院,内科併診となった.糖尿病はスルホニル尿素薬(SU薬)のみの治療でこの間コントロールは不良,インスリン開始したが注射後顔面紅潮,食欲不振,嘔気等の全身症状を呈した.インスリン継続中,造影剤にて既往のなかったアナフィラキシーに陥った.抗生物質にもアレルギーが存在した.現在糖尿病のコントロールはSU薬に戻しHbA1c 7∼8%台である.B型肝炎を基盤とした術後の難治性感染の治療中にインスリンを導入して,インスリンを始めとする複数の薬剤に,連鎖的な有害な薬物反応を呈した症例であった.