2008 年 51 巻 12 号 p. 1099-1103
骨格筋の化膿性感染症である化膿性筋炎は熱帯地域でよく見られるが,近年,温帯地域で増加している.われわれは糖尿病に合併した腰痛を主訴とした傍脊柱筋の化膿性筋炎の3例を経験した.症例1は49歳の女性で糖尿病性ケトアシドーシスを合併,症例2は60歳男性で腰部の筋肉注射後に発症,症例3は68歳男性で椎弓切除術後に乳酸アシドーシス,横紋筋融解症に伴う急性腎不全を合併して発症した.全例に脊柱起立筋に病変を認め,症例1は腸腰筋へ,症例3は臀筋群と大腿四頭筋への病変の進展を認めたが,全例治癒した.まれではあるが,腰痛の鑑別診断として傍脊柱筋の化膿性筋炎を考える必要がある.また,糖尿病症例に筋肉注射や他の外科的処置を行うと化膿性筋炎の危険が高まる可能性があり注意が必要である.