糖尿病
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症例報告
糖尿病性自律神経障害により労作時呼吸困難を呈した1例
櫻井 華奈子高橋 昭光宮原 尚子岩崎 祐子鈴木 浩明島野 仁山田 信博
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2008 年 51 巻 8 号 p. 765-770

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抄録

症例は52歳,男性.11年来の糖尿病があり,歩行時の息切れを主訴に入院.HbA1c 3.9%, 増殖性網膜症,顕性腎症(3B期)とともに,アキレス腱反射消失,下肢振動覚低下の末梢神経障害を認めた.合併する肝硬変,低アルブミン血症による両側胸水はフロセミド投与後消失するも労作時呼吸困難(dyspnea on exertion: DOE)は持続.心電図,心エコー図法では異常を認めず,呼吸機能検査でも軽度閉塞性障害を認めたのみであった.またシェロングテストは立位2分後に55 mmHgの血圧低下を認め陽性,心電図R-R間隔変動(CVR-R)低下を認め,123I-MIBG (123I-metaiodobenzylguanidine)心筋シンチグラフィー,心拍変動パワースペクトル解析でも心臓自律神経の重篤な障害が示唆された.運動負荷試験(平地80 m歩行)で心拍数増加および収縮期血圧上昇を認めなかったが,メチル硫酸アメジニウム投与にて心拍数増加および収縮期血圧上昇を認め,症状の著明な改善を認めた.本例では運動時の心拍数増加不良によりDOEを呈したと考えられた.

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© 2008 一般社団法人 日本糖尿病学会
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