糖尿病
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症例報告
インスリン受容体抗体偽陽性が疑われたインスリン自己免疫症候群の1例
谷口 潤粂川 真里旭 暢照佐藤 知也大野 敦植木 彬夫小田原 雅人
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2009 年 52 巻 6 号 p. 449-455

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抄録

症例は28歳,女性.職業は看護師.仕事中に発汗,動悸,手指振戦出現.血糖自己測定器にて,低血糖を認めたため菓子,ジュースにて対応していたが,低血糖発作が頻発するため受診となる.血糖値59 mg/dl, IRI 4,600 μU/mlと,著明な高インスリン血症を認めたため入院となる.インスリン注射歴はなく,インスリン抗体97%, Scatchard解析にてhigh-affinity siteのk値は0.12 (108 l/mol), b値は,21.8 (10-8 mol/l)であった.以上より,インスリン自己免疫症候群と診断した.低血糖発作は,食後3時間と夜間中心に頻発し,分割食,αグルコシダーゼ阻害薬にて改善した.経過とともに低血糖の頻度は低下し,IRI, インスリン抗体も自然寛解傾向を認めた.本症例はインスリン受容体抗体も陽性を呈したが,これは著明な高インスリン抗体血症による偽陽性が疑われた.自己免疫疾患の背景もなく,SH基を有する薬剤内服歴もない,著明な高インスリン血症を呈するインスリン自己免疫症候群を経験したので報告する.

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© 2009 一般社団法人 日本糖尿病学会
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