糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
病態・代謝異常・合併症
糖尿病診療ガイドラインと可溶性接着分子E-selectin濃度との関係
松本 一成原口 愛藤島 圭一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 54 巻 12 号 p. 894-898

詳細
抄録

我々は以前に,血管内皮の活性化マーカーである可溶性接着分子E-selectin(sE-selectin)は,心血管イベントの予知に有用であることを報告した.また,糖尿病診療ガイドラインの目標値が達成されるほどに,心血管イベントが減少することも報告した.このことから,ガイドラインの遵守状態が良くなればsE-selectinが低値になるという仮説を立てて検証してみた.392例の心血管病の既往がない2型糖尿病患者のコントロール状態とsE-selectinを測定した.重回帰分析において,sE-selectinの独立した正の関連因子はbody mass index, HbA1c(JDS値)であったが,LDL-コレステロールは負の関連因子であった(F=6.61, p<0.01).ガイドラインの目標値,1)HbA1c(JDS値)6.5 %未満,2)血圧130/80 mmHg未満,3)LDL-コレステロール120 mg/dl未満,の3項目中何項目を達成しているかで患者を3群に分類して,sE-selectinを比較した.sE-selectinは,0-1項目で73.3±34.4 ng/ml, 2項目で65.4±34.2 ng/ml, 3項目で61.3±25.9 ng/mlで群間に有意差を認めた(p<0.01).したがって,ガイドラインの目標達成数が増えると,血管内皮の活性化は抑制されてsE-selectinは低値となり,心血管イベントの減少につながる可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top