2011 年 54 巻 3 号 p. 183-186
症例は59歳の男性.8年前に糖尿病を指摘され治療をしていたが自己中断していた.6ヶ月前より咳嗽が出現し始め,体重減少,全身倦怠感,発熱も認めた.症状が軽快しなかったため当院を受診した.HbA1c 10.5%(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病53:450-467, 2010)),空腹時血糖252 mg/dlと血糖コントロール不良のため入院となった.胆道系酵素の上昇を認め,腹部造影CTを施行したところ,肝臓S7, S8領域に分葉状の膿瘍形成を認めた.経皮経肝肝膿瘍ドレナージを施行したところ排液からY. Pseudotuberculosisが同定された.同菌の成人発症例は少なく,さらに多発性肝膿瘍の合併報告例は文献的にも過去2例の報告を見るのみであり,貴重な症例を経験した.