2011 年 54 巻 4 号 p. 288-293
症例は21歳男性.これまで糖尿病は指摘されていなかったが,2009年1月初め頃より口渇が出現し,ソフトドリンクを多飲していた.同月末に嘔吐,意識障害を主訴に救急病院を受診,著明な高血糖と尿ケトン体,代謝性アシドーシスの存在から糖尿病性ケトアシドーシスの診断となり当院に転送された.大量補液とインスリン持続投与により,翌日には血糖,アシドーシスともに改善したが,高熱,腹部症状の増悪がみられ,腹部CTにて腸管壊死が疑われた.緊急開腹手術となり壊死腸管を切除するも状態は改善せず,敗血症性ショックから多臓器不全をきたし死亡した.切除標本では動脈硬化や血栓性閉塞の所見は認められず,非閉塞性腸間膜虚血と診断した.若年者において糖尿病性ケトアシドーシスに同疾患を併発した症例報告はこれまで非常に少なく,本症例が世界で4例目,本邦では初の報告である.それぞれの病態から早期診断が難しく,注意が必要と思われる.