2012 年 55 巻 9 号 p. 722-726
劇症1型糖尿病の急性期に高頻度で肝機能障害を合併するとされているが,その病態については不明な点が多い.症例は40歳女性.2011年4月20日から嘔吐や口渇が出現し,4月22日開眼しているものの会話はかみ合わない状態となり救急搬送された.血液検査にて血糖1063 mg/dl, HbA1c 5.6 %(以下HbA1cはJDS値で表記(糖尿病53:450-467, 2010),尿ケトン陽性,動脈血pH 7.19であり,糖尿病性ケトアシドーシスとの診断にて入院となり,インスリン治療を開始した.入院後の精査にて劇症1型糖尿病と診断した.第7病日より一過性にAST, ALTの上昇を認め,第15病日に最大となり,第32病日に正常化した.入院時の腹部CT,第4病日の腹部MRIにて脂肪肝と膵腫大を認めた.1ヶ月後の腹部MRIにて脂肪肝と膵腫大は改善していた.また第4病日の腹部MRI拡散強調画像にて膵の高信号を認めたが,1か月後には改善していた.一過性の膵腫大と高度脂肪肝を合併し,その経過をMRIにて観察しえた劇症1型糖尿病の1症例を経験したので報告する.